医療用OCTから光慣性航法、海底通信、宇宙・量子まで
用途で見るG&H社ファイバーカプラーの特長

用途で見るG&H社ファイバーカプラーの特長

ファイバーカプラーは、光ファイバーを伝搬する光を複数の経路へ分岐したり、反対に複数の光を一本のファイバーへ結合したりする光部品です。

一見すると単純な分岐部品に見えますが、実際にはカプラーの挿入損失、分岐比、波長依存性、偏波特性、位相特性、温度安定性などが、光学システム全体の性能を左右します。 特に、医療用・バイオイメージング、航空宇宙、防衛、光慣性航法、海底通信、宇宙機器、量子技術、精密計測といった分野では、単に「光を分けられる」だけでは不

十分です。使用する波長や光パワー、偏波状態、使用環境に適したカプラーを選定する必要があります。

G&H社は、融着型ファイバーカプラーを中心に、SM、PM、広帯域、低分岐比、NxN、HI-RELなどの製品を展開しています。本記事では、それぞれの特長がどのようなアプリケーションに結び付くのかを解説します。

1. 光をファイバーの外へ出さない融着型構造

G&H社のファイバーカプラーには、複数の光ファイバーを加熱・延伸して光を結合させる、融着延伸型の技術が使用されています。

レンズやミラーを使った自由空間型の光学系とは異なり、光がファイバーの外へ出ないため、光軸調整を必要としません。 また、光学面で生じる不要な反射を抑えやすく、出力側のファイバーをそのまま装置内部の光路やビーム伝送系へ接続できます。 G&H社は、この構造によって低損失、高い光パワー耐性、機械的な安定性を実現しています。

こうしたオールファイバー構造は、振動や温度変化がある環境、装置内部で再調整が難しいシステム、小型化や量産再現性が求められるOEM機器に適しています。

主な用途として、医療・バイオイメージング装置、ファイバーセンサー、航空機搭載機器、防衛機器、ファイバーレーザーシステムなどが挙げられます。


2. 広い波長帯域を低損失で分岐する — 医療用・バイオイメージングOCT

OCT(Optical Coherence Tomography:光干渉断層撮影)では、ファイバーカプラーを使用して光源からの光を測定光路と参照光路へ分岐し、戻ってきた光を再び合波して干渉信号を生成します。

そのため、カプラーの挿入損失や分岐比だけでなく、使用する光源の帯域全体で分岐特性が安定していることが重要です。

OCTでは、一般に光源の帯域を広げることで、深さ方向である軸方向の分解能を高められます。 しかし、カプラーの分岐比が波長によって大きく変化すると、光源が持つ広いスペクトルを十分に活用できず、感度や画像品質に影響する可能性があります。

G&H社は、850 nm、1060 nm、1300/1310 nm帯に対応する広帯域OCTカプラーを展開しています。 標準的な広帯域タイプに加え、850 nm、1060 nm、1310 nmを中心として±100 nmの帯域に対応するExtended Wideband OCT Couplerも用意されており、広帯域光源や次世代の波長掃引光源を使用する高分解能OCTシステムを想定しています。

このような特性は、眼科OCTだけでなく、皮膚、血管、歯科、内視鏡、工業用OCTなど、非破壊で内部構造を観察するイメージングシステムにも活用できます。


3.偏波状態を維持して光を分岐する — 光慣性航法と精密計測

干渉計や光ファイバージャイロでは、光の強度だけでなく、偏波状態や位相を安定して維持する必要があります。 偏波状態が変化すると、干渉信号の振幅やコントラストが変動し、測定誤差やドリフトの原因になります。 このため、偏波保持ファイバーを使用したシステムでは、カプラーにも高い偏波消光比と低い光損失が求められます。

G&H社のPMファイバーカプラーは、FBT方式によって製造され、1:99から50:50までの分岐比に対応しています。 標準ではPMファイバーの遅軸へ光を入射する構成ですが、速軸仕様や軸に依存しにくい構成も選択できます。

さらに、G&H社のNxN融着型カプラーには、1×3、3×3、1×4、4×4などの構成があります。 単一の融着部で光を分岐することによる位相特性を生かし、光ファイバージャイロへの使用が想定されています。

直径80 µmクラッドのファイバーピグテールや小型パッケージにも対応し、FOGのセンシングコイルへ直接組み込みやすい設計が可能です。

光ファイバージャイロは、航空機、船舶、無人航空機、ミサイル、人工衛星などの慣性航法システムに使用されます。 G&H社は、航空・海上用のリングレーザージャイロと、ミサイルやUAVなどに搭載される光ファイバージャイロの双方に向けて、精密光学部品とファイバーカプラーを提供しています。

同様に、レーザー干渉計、ファイバーセンサー、光周波数計測、変位・振動計測などの精密計測分野でも、低損失、偏波安定性、分岐比の安定性が測定の再現性向上に貢献します。


4. 温度・振動・長期使用に耐える — 航空宇宙・防衛・宇宙機器

航空宇宙・防衛機器では、温度変化、振動、衝撃、低圧環境などの影響を受けながら、長期間にわたって安定した性能を維持しなければなりません。

ファイバーカプラーの損失や分岐比が温度によって変化すると、センサーや干渉計の出力が変動し、装置の校正や測定精度に影響します。また、人工衛星や探査機では、打ち上げ後の部品交換は事実上不可能です。

G&H社のPM低分岐比タップカプラーには、タップ側の温度依存損失が代表値で0.002 dB/°C未満となる製品があります。

また、HI-RELシリーズでは、海底や宇宙など、部品交換が困難な環境での使用を想定したPMカプラー、低分岐比タップカプラー、WDMなどが用意されています。

G&H社は、航空宇宙、防衛、アビオニクス向けに、標準品だけでなく、機械構造、ファイバー管理、パッケージ、環境試験などを含むカスタム対応も行っています。


5. 25年間の長期運用を支える — 海底通信

海底光通信システムは、敷設後に部品を交換することが極めて困難です。万一、海底中継器内部の部品が故障すれば、修理には大規模な作業と費用が必要になります。

そのため、海底通信に使用するファイバーカプラーには、低損失だけでなく、数十年間の連続運用を前提とした信頼性が求められます。

G&H社のHI-REL融着型カプラーは、0.1 FITを設計基準としています。これは、10億時間の稼働に対して0.1件の故障率を表す指標であり、G&H社は約25年間でおよそ5万個に1個の故障に相当すると説明しています。 加速寿命試験、ワイブル解析、工程内スクリーニング、ファイバー管理、顧客別の認定試験などを通じて、長期信頼性を評価しています。

また、G&H社は海底通信向けHI-REL融着型カプラーを世界で50万個以上供給し、20年以上にわたって市場での故障が報告されていないとしています。

超低損失のカプラーは、中継器内部の光パワー損失や増幅器のノイズを抑え、長距離伝送システムの光パワーバジェット確保にも貢献します。


6. 微弱な光を効率よく扱う — 量子技術

量子コンピューティング、量子通信、量子センシングでは、光子やレーザー光の偏波、位相、強度を精密に制御する必要があります。

特に単一光子レベルの信号を扱うシステムでは、わずかな光損失も検出効率や計測時間に影響します。 また、偏波を情報として利用する量子通信や量子光学実験では、カプラー通過後も偏波状態を安定して維持することが重要です。

G&H社は、450~700 nmに対応する可視光PMカプラーを量子コンピューティング、量子通信、量子センシング向けに提案しています。 高い偏波消光比、低い過剰損失、高い光パワー耐性を持ち、遅軸、速軸、両軸に対応する構成が用意されています。

量子システムでは、ファイバーカプラー単体ですべての光制御を行うわけではありません。 AOMファイバーカップルAOモジュレータなどと組み合わせることで、光の分岐・合波、強度制御、周波数シフト、タイミング制御を含むオールファイバー光学系を構成できます。


7. 主光路への影響を抑えて光を監視する — レーザー・センシング・精密 計測

レーザーシステムや精密計測装置では、メインの光パワーをほとんど維持したまま、ごく一部の光だけを取り出して出力を監視したい場合があります。このような用途には、1%以下の光をタップする低分岐比カプラーが使用されます。

G&H社の超低分岐比PMタップカプラーは、0.01%までのタップ比に対応しています。オールファイバー構造による低損失、高い偏波消光比、高パワー時の信頼性に加え、入力光の偏波消光比が低い場合や変動する場合でも、タップ比の安定性を高める設計が採用されています。

これにより、レーザー出力モニタリング、光増幅器の監視、ファイバーセンサー、干渉計、量子光学実験などで、メイン信号への影響を抑えながら光パワーを測定できます。


8. 用途ごとに求められる特長は異なる

ファイバーカプラーを選定する際は、用途名だけで製品を決めるのではなく、
システムで何を維持しなければならないかを整理することが重要です。

求められる特長 システム上のメリット 主な用途
広帯域・低波長依存性 広帯域光源のスペクトルを有効利用 医療用OCT、バイオイメージング、工業用OCT
高い偏波消光比 偏波変動による干渉信号の変動を抑制 FOG、量子通信、干渉計、精密計測
安定した位相特性 回転・変位・位相情報を高精度に検出 光慣性航法、ファイバージャイロ
超低損失 光パワーバジェットと信号対雑音比を確保 海底通信、量子、センシング
低分岐比・超低分岐比 主光路への影響を抑えたモニタリング レーザー、光増幅器、精密計測
高い光パワー耐性 高出力レーザー光を安定して分岐 ファイバーレーザー、医療レーザー、産業機器
温度・環境安定性 温度変化や振動による出力変動を抑制 航空宇宙、防衛、車載、屋外センシング
長期信頼性 交換困難な場所で長期間運用 海底通信、人工衛星、宇宙機器

9. G&H社ファイバーカプラーの選定

G&H社では、可視から近赤外、通信用波長まで、幅広い融着型ファイバーカプラーを提供しています。

主な製品群には、SMカプラー、PMカプラー、広帯域OCTカプラー、低分岐比タップカプラー、
NxNカプラー、HI-RELカプラー、WDMなどがあります。

選定時には、次の仕様を確認します。

  • 使用波長と必要帯域
  • 1×2、2×2、3×3、4×4などのポート構成
  • 分岐比またはタップ比
  • 挿入損失・過剰損失
  • 波長依存損失
  • 偏波消光比と偏波軸
  • 反射減衰量・指向性
  • 位相特性
  • 最大光パワー
  • 使用温度範囲
  • パッケージとファイバーピグテール
  • 必要な環境試験・信頼性基準

医療用OCTと海底通信では、同じファイバーカプラーでも重視する性能が大きく異なります。
オプトサイエンスでは、波長、帯域、偏波、分岐比、使用環境などの条件から、
G&H社製品の選定およびカスタム仕様についてご相談いただけます。

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