光アイソレータ(ファラデーアイソレータ)の動作原理

光アイソレータとは、光を一方向にのみ通過させる光学部品です。
動作原理は非線形ファラデー効果(磁気回転)に基づいています。
原理的に、光アイソレータは電気回路のダイオードにたとえることができます。

ファラデーアイソレータは以下の3つの光学素子で構成されています。

  • 入射偏光子
  • ファラデーローテータ
  • 出射偏光子
光アイソレータ(ファラデーアイソレータ)の動作原理

入射と出射用の偏光子には薄膜偏光ビームスプリッタキューブが一般的に使われます。
これらの偏光子は非常に高い消光比を有し、高出力レーザー用に設計されています。
偏光子の入射面と出射面は、指定した波長範囲で無反射コーティングがされています。
光アイソレータの鍵となる重要な光学素子は、ファラデーローテータです。
ローテータは強い永久磁石と高ヴェルデ定数の結晶から構成されます。

入射偏光子に光が入ると、水平または垂直の直線偏光として出射されます。
一般的なレーザー光は直線偏光であるため、アイソレーター本体を回転させれば、入射偏光子をレーザーの偏光向きと一致させることができます。
次に、光はファラデーローテータを通過します。ほとんどの波長で、TGG結晶 (TerbiµmGalliµm Garnet) がローテータに使われています。
TGG 結晶は均一で強力な磁界内に配置されてます。
結晶を出る時の光の偏光が45°回転するように結晶の長さと磁場の強さが調整されています。
上の図では、磁場の南北方向で見た時に光が反時計回りに±45°回転し、出射偏光子も±45°に向けられているため、通過するビーム強度が最大になります。

逆向きに戻ってくる光は、出射偏光子にあたると ±45° の偏光のみとなり、ファラデーローテータを通過すると偏光方向が再び ±45° 回転します。
ファラデー効果の非相反性により、磁場の南北方向から見て、回転方向が再び反時計回りになります。
つまりファラデーローテータを通過することで偏光は2回の±45°回転を経て、合計で±90°回転します。
入射偏光子は、この回転された偏光を反射するのでレーザー側へ光が戻らなくなります。

アイソレーションの強化

TGG 結晶と磁場の不均一性によって光アイソレータの最大アイソレーションは制限されます。
ただし、2 つのアイソレータを直列に配置し、2 つの磁石の極性を互いに反対に配置することで、消光比を2乗することができます。
この場合、光アイソレータの透過光は入口と出口で偏光方向が変わらず、互いの磁場の効果が強化されます。
この配置は、よりコンパクトな光アイソレータを設計する場合にも有利です。
この効果の強さは 2 つの磁石の距離に依存し、距離の調整は光アイソレータの波長調整にも利用できます。
TGG 結晶の回転角は波長と温度に依存するため、調整が必要です。
詳細については、2 ステージ光アイソレータの解説ページを参照してください。

高いアイソレーション特性の LINOS 光アイソレータ

LINOS ブランドとして知られたファラデーアイソレータの特性は、光学素子の品質と磁場の均一性によって決まります。
入射偏光子と出射偏光子は十分に高い消光比を持つため、アイソレーションの性能は主に結晶材料の均一性よって決まります。
ヴェルデ定数が高く残留磁気が高い永久磁石を特別に選定した結晶と組合せ、短い結晶長で >30dB のアイソレーションを達成できました。

入射偏光子と出射偏光子によってブロックされたビームは内部で吸収されず、ビーム方向に対して 90° に反射されます。
これにより、高出力レーザーでも安定した熱動作が保証されます。ブロックされたビームは他の用途に使用できます。
光アイソレータのすべての光学面は、ビーム軸に対してわずかに傾斜させています。

低挿入損失

すべての入射面と出射面で反射防止コーティングを使用して通常 >90% の高い透過率を実現しています。

大口径かつコンパクトなデザイン

光アイソレータに使われる光学部品は、ビームが遮られることがなく簡単に調整できるように精度良く組み立てられています。
フォーカス調整の必要はありません。
残留磁性が最も高い希土類磁石とヴェルデ定数の高い TGG 結晶材料を使用することでコンパクトなデザインを実現しています。
光アイソレータは、発散ビームや限られたスペースのセットアップに適しています。
アイソレータの光路長を最小にして、像への影響を最小限に抑えます。

入射偏光子と出射偏光子は3つ面にアクセス可能で、クリーニングしやすい構成です。
アイソレーションは広範囲に調整できます。

光アイソレータのマウント

LINOS ファラデー光アイソレータは、ハウジングのネジ穴を使って直接マウントできます。
またはベースプレートやアングルブラケットが含まれた光アイソレータもございます。

用 途

レーザー技術の継続的な開発と改良により、レーザー共振器を戻り光から保護する光学部品が必要になっています。
LINOS ファラデーアイソレータは、レーザーデバイスの不安定性と強度変動を抑制する効率的な方法を提供します。

光アイソレータの典型的な用途は次のとおりです。

  • 戻り光から固体レーザーやガスレーザーの共振器を保護
  • 多段アンプシステムの寄生発振の防止
  • 散乱光や外部光から半導体レーザーを保護

シングルステージの光アイソレータについて

シングルステージの光アイソレータ FI-xxx-5SV FI-xxx-5SV
シングルステージの光アイソレータ

低アウトガス シングルステージの光アイソレータ FI-xxx-3SC LO FI-xxx-3SC LO
低アウトガス シングルステージの光アイソレータ

はじめに

ここで解説するコンパクトな LINOS ファラデーアイソレータは、シングルステージローテータを使用しています。
強力な永久磁石を最適な形で組付けることで、光アイソレータの全長を最小限に抑えています。
出射偏光子を 360° 回転させることで、指定の波長範囲内で最大の消光が得られます。
入射偏光子と出射偏光子は、偏光ビームスプリッタキューブです。ブロックされたビームは90°方向転換され、他の用途にも利用できます。
シングルステージの光アイソレータがもつ 30dB のアイソレーションは、ほとんどの一般レーザー用途に十分な性能です。

波長調整

TGG 結晶のヴェルデ定数は、波長と温度に依存します。
異なる波長や異なる温度で最大の消光を達成するためにアイソレータを調整することができます。
角度目盛り付の出射偏光子のホルダを回転させて光アイソレータを調整します。

このグラフは、設計波長λ0 とは異なる波長λへのアイソレータの調整による透過率の典型的な低減係数(Δλ)を示しています。
表中の太い横線は、0.95 < T(Δλ) <1 で規定される光アイソレータの波長範囲を表します。
曲線グラフの頂点が設計波長λ0です。
ファラデーアイソレータ全体の透過率は Tt = T0 x T(Δλ) になどしく、 ここで T0 は偏光子の透過率を表す係数です。
設計波長において、ファラデーアイソレータの透過率はT0 > 90%です。

波長調整

用 途

シングルステージ光アイソレータは、次のレーザーをお使いのお客様にお勧めです。

  • アルゴンレーザーやクリプトンレーザー
  • HeNe レーザー
  • その他のガスレーザー
  • 色素レーザー
  • 半導体レーザー
  • Ti:Sa チタンサファイアレーザー
  • Cr:LiCAF レーザー
  • 短パルスレーザー
  • モードロックレーザー
  • アレキサンドライトレーザー

広帯域波長チューニングの光アイソレータについて

チューナブル光アイソレータ FI-500/820-5SV FI-500/820-5SV
チューナブル光アイソレータ

チューナブル光アイソレータ FI-600/1100-5SI FI-600/1100-5SI
チューナブル光アイソレータ

はじめに

広帯域波長チューニングできる光アイソレータは、シングルステージのファラデーアイソレータです。
精密な機構により、光学部品を動かすことなく、磁場とTGG結晶の間の相互作用を連続的に調整できます。

さまざまな強度のフィードバックの影響を調べるために、波長範囲内で偏光の回転角を 0° から 45° で任意の値に設定できます。
偏光ビームスプリッタキューブで 90° に偏向されるブロックビームを別の用途に使えます。

精密な機構により、以前に確立したベストな調整を正確に再現できます。
非常に強力な磁石を採用することで、コンパクトで効率的なチューナブル光アイソレータを設計しました。

使い方

光アイソレータを光学ロッドや光学マウントに取付けて、レーザーの水平または垂直の偏光方向に合わせてください。
入射と出射側の偏光子は、保護キャップを取り外せば簡単にクリーニングできます。

用 途

広帯域波長チューニングの光アイソレータは、430~460nm、500~820nm、600~1100nm の波長範囲で動作するすべてのレーザーに適しています。

  • アルゴンレーザーやクリプトンレーザー
  • HeNe レーザー
  • その他のガスレーザー
  • 色素レーザー
  • 半導体レーザー
  • Ti:Sa チタンサファイアレーザー
  • Cr:LiCAF レーザー
  • 短パルスレーザー
  • モードロックレーザー
  • アレキサンドライトレーザー

2 ステージの光アイソレータについて

FI-x-5TVC & FI-x-5TIC シリーズ 光アイソレータ

FI-x-5TVC 2ステージ光アイソレータ FI-x-5TVC
2ステージ光アイソレータ

FI-x-5TIC 2ステージ光アイソレータ FI-x-5TIC
2ステージ光アイソレータ

半導体レーザーは戻り光に非常に敏感です。
シングルステージのアイソレータは通常 30dB から 40dB のアイソレーションを実現しますが、これでは望ましくないフィードバックを抑制するのに十分でない場合があります。
2 ステージの光アイソレータは半導体レーザーのために開発されました。
この開発は、2 つ連結したアイソレータに市場で入手可能な最高の偏光子を組合せることを中心に進行しました。

この構成では、中央にある1個の偏光子が第1ステージの出射偏光子と第2ステージの入射偏光子の役割を果たします。

2 つの磁石の極性を互いに反対に配置することには、2 つの利点があります。
1 つ目は光アイソレータ入射された偏光方向が出射側でも変わらないことです。
2 つ目は磁場の効果が互いに強化されることです。
したがって、コンパクトな全長と短い光路長という光アイソレータの品質向上を、この構成が実現させました。

すべての光学面は反射防止コーティングが施され、ビーム軸に垂直な面は傾斜しています。
偏光子は、外部の光学面を簡単に清掃できるように取り付けられています。
これにより、アイソレータからの残留反射や散乱によってアイソレーションが低下しないことが保証されます。
この特別な設計に基づいて、設計波長およびチューニング範囲内で 60dB のアイソレーションが保証されている 2 ステージの光アイソレータは、市販品の中で最高レベルの性能を持っています。

DLI シリーズ 光アイソレータ

DLIシリーズ 2ステージ チューナブル光アイソレータ DLI シリーズ
2 ステージ チューナブル光アイソレータ

DLI シリーズの光アイソレータは、可視スペクトルの半導体レーザーのために開発されました。
2 ステージアイソレータの特長である高アイソレーションと波長チューニングの特性を DLI 光アイソレータも兼ね備えています。

DLI 光アイソレータは、既存の光学セットアップに簡単に統合でき、さらに任意の波長に調整できます。
入射と出射のレーザー偏光方向は変わりません。レーザービーム位置の移動も起こりません。
この光アイソレータでは、2 つのアイソレータステージの磁場を変更することにより、大まかな波長調整をします。
波長の微調整には、マイクロメーターで中央の偏光子を回転させます。
ブロックされたビームは光軸に対して 90° の方向に反射されます。
ブロックされたビームはアイソレータ内部では吸収されず、偏光子の側面とウィンドウから出てきます。

DLI インジェクションロック

DLI インジェクションバージョンは、この動作モードを回転させ、ブロックビーム出力用のウインドウをインジェクションロック用のシードレーザーのインカップリングに使うと同時にマスターレーザーとスレーブレーザーを効率的にデカップリングします。
このようにして、Ti:Sapphire レーザーなどのモードロックを簡素化します。

用 途

2 ステージの光ファラデーアイソレータは、レーザー分光・干渉計・精密制御・アライメントで使用される半導体レーザーの出力と周波数の安定性を向上させるために使用されます。
2 ステージの光ファラデーアイソレータは偏光方向とビーム位置が保存されるため、レーザーへの影響が最小になります。


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