AOFS(Acousto-Optic Frequency Shifter:AO周波数シフター)は、音響光学効果を利用して、レーザー光に一定の光周波数シフトを与えるデバイスです。
AOFSへRF信号を入力すると、音響光学結晶内に移動する回折格子が形成されます。 入射光の一部は1次回折光として取り出され、この回折光には、入力したRF周波数に相当する光周波数シフトが生じます。
ヘテロダイン干渉計測、レーザードップラー速度・振動計測、光学テスト・センシングなど、基準光と測定光の間に安定した周波数差を設ける用途に使用されます。 G&H社は、低挿入損失、高い回折効率、低RFパワーを特長とするTeO2製AO周波数シフターを提供しています。
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AO周波数シフターとは
AOFSは、音響光学結晶に取り付けられたトランスデューサへRF信号を入力し、結晶内部に音響波を発生させるデバイスです。
この音響波によって結晶内部の屈折率が周期的に変化し、レーザー光に対して移動する回折格子として働きます。 入射光は、直進する0次光と、角度を持って出射する1次回折光に分かれます。
1次回折光の光周波数は、概ね次の関係で表されます。
出射光の周波数 = 入射光の周波数 ± RF周波数
光周波数が高くなる方向をアップシフト、低くなる方向をダウンシフトと呼びます。シフトの方向は、音響波の進行方向、入射方向、使用する回折光の配置によって決まります。
G&H社製AOFSの特長
RF周波数に相当する安定した光周波数シフト
1次回折光には、AOFSへ入力したRF周波数に相当する光周波数シフトが生じます。
40 MHz、80 MHz、100 MHz、200 MHzなど、目的とする周波数差に応じて製品を選定できます。 G&H社は、標準製品に加えて、最大600 MHzの周波数シフトに対応するカスタム設計も案内しています。
低挿入損失・高い光パワー耐性
G&H社は、AOFS用の高品質なTeO2結晶を自社で育成・研磨しています。
高い音響光学効率を持つTeO2を採用することで、低挿入損失、高い回折効率、優れた光パワー耐性を実現しています。
低いRF駆動パワー
G&H社の専用AOFSでは、TeO2の異方性スローシアモードを利用します。
この方式は応答速度が比較的遅い一方、少ないRFパワーで高い回折効率を得られることが特長です。 G&H社は、代表的な設計のRF消費電力を100 mW未満と説明しています。
ただし、ここでいうRFパワーと、RFドライバー内蔵モジュール全体の電源消費は異なります。
0次光と1次回折光を偏光で分離
TeO2の異方性相互作用を利用するAOFSでは、0次光と1次回折光の偏光方向が直交します。
AOFSの後段に偏光子を配置することで、周波数シフトされていない0次光と、周波数シフトされた1次回折光を選択的に分離できます。 不要な光漏れや、0次光と1次回折光の干渉によるビート成分を抑えるうえで有効です。
なお、最終的に得られる消光比はAOFS単体だけでなく、使用する偏光子の消光性能に左右されます。
ダブルパス構成に対応
G&H社の40 MHzタイプは、AOFSを2回通過させるダブルパス構成を考慮して設計されています。
ダブルパスでは、光学配置によって周波数シフト量を加算できるため、40 MHzのAOFSから80 MHzの周波数差を得る構成などが可能です。 実際のシフト方向やビーム経路は、ミラーや偏光素子を含めた光学系によって決まります。
仕様・データシート
専用AO周波数シフター
AOFSは、まず必要な光周波数シフト量と使用波長から候補を絞り込みます。
そのうえで、偏光方向、0次光と1次回折光の分離角、回折効率、挿入損失、アクティブアパーチャ、RFドライバーの構成を確認します。
| モデル・データシート | 波長 | 周波数シフト | 分離角 | アクティブアパーチャ | 回折効率 | RFドライバー |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 532 nm | 40 MHz | 2° | 1.5 mm(垂直) | 90%超 | 外付け |
AOMを周波数シフターとして使用する場合
AOデバイスの1次回折光には、RF中心周波数に相当する光周波数シフトが生じます。
40MHz以外の周波数シフトや、専用AO周波数シフターでは対応できない波長では、AOMを周波数シフターとして使用できます。
必要な光周波数シフト量(RF中心周波数)と使用波長からAOMの候補を選び、ビーム径、偏光、回折効率、RFドライバーなどの条件を確認してください。
アップシフト、またはダウンシフトの方向は、音響波の進行方向、レーザー光の入射方向、使用する回折次数によって決まります。
80MHz、100MHz、200MHzなどの光周波数シフトには、周波数シフト用途に対応するAOMを使用できます。
| 周波数シフト量 | 対応波長 | モデル | アクティブアパーチャ | RFドライバー |
|---|---|---|---|---|
| 80 MHZ | 製品仕様による | AOMO 3080シリーズ | 製品仕様による | 外付け |
| 100 MHZ | 450~850 nm | AOMO 3100-125 | 1.5 x 2.5 mm | 外付け |
| 200 MHZ | 製品仕様による | AOMO 3200シリーズ | 製品仕様による | 外付け |
| 270 MHz | 450~850 nm | AOMO 3270-125 | 1.5 x 2.5 mm | 外付け |
| 315 MHZ | 製品仕様による | AOMO 3315シリーズ | 製品仕様による | 外付け |
| 350 MHz | 450~850 nm | AOMO 3350-125 | 1.5 x 2.5 mm | 外付け |
AOFSの選び方
AOFSの選定で最初に確認するのは、必要な光周波数シフト量です。
そのうえで、波長、アップシフト/ダウンシフト、偏光、回折効率、ビーム分離角、RFドライバーの構成を確認します。
AOFSの主な機能・用途
ヘテロダイン干渉計測
基準光と測定光の間に一定の周波数差を設け、光検出器でビート信号として読み出します。 変位、距離、速度、振動などの高感度計測に使用されます。
レーザードップラー速度・振動計測
AOFSによって基準となる周波数オフセットを与え、対象物の運動によって生じるドップラーシフトを検出します。 レーザードップラー速度計や振動計に使用されます。
光学テスト・センシング
安定した周波数差を持つ2本の光を生成し、位相変化や周波数変化を電気信号として検出します。 精密光学計測、センサー、OEM計測装置などに利用されます。
原子・量子光学
レーザー光へ一定の周波数オフセットを与え、原子冷却、原子トラップ、量子状態制御などに使用できます。 必要な周波数シフト量、応答速度、光強度制御の有無によって、専用AOFSまたは周波数シフト対応AOMを選定します。
FAQ
Q1AOFSで生じる周波数シフト量は何で決まりますか?
AOFSへ入力するRF周波数によって決まります。
40 MHzで駆動した場合、1次回折光には入射光に対してプラスまたはマイナス40 MHzの周波数シフトが生じます。
Q2レーザー光の波長も変わりますか?
光周波数が変化するため、物理的には波長もわずかに変化します。
ただし、MHz単位の光周波数シフトによる波長変化は非常に小さいため、通常は「波長シフト」ではなく「光周波数シフト」として扱います。
Q3アップシフトとダウンシフトの両方が可能ですか?
光学配置によって、どちらも可能です。
シフト方向は、音響波の進行方向、レーザー光の入射方向、使用する回折次数によって決まります。
必要な方向を指定して光学系を設計します。
Q40次光と1次回折光のどちらを使用しますか?
光周波数シフトを利用する場合は、1次回折光を使用します。
0次光はAOFSを直進するため、基本的に光周波数はシフトされません。
Q50次光と1次回折光はどのように分離しますか?
出射角度の違いと偏光方向の違いを利用します。
G&H社のTeO2製専用AOFSでは、0次光と1次回折光の偏光方向が直交するため、偏光子によって周波数シフトされた1次回折光を選択できます。
Q6消光比はAOFSの仕様で決まりますか?
AOFSだけでは決まりません。
0次光と1次回折光を分離する偏光子の消光比、光学調整、散乱光、戻り光などによって決まります。
G&H社も、最終的な消光比は使用する偏光子に依存すると説明しています。
Q7RFドライバーは必要ですか?
必要です。
一部製品にはRFドライバーが内蔵されていますが、それ以外の製品では、周波数、RFパワー、インピーダンスに対応する外部RFドライバーを使用します。
Q8ダブルパスで使用できますか?
対応可能です。
G&H社の40 MHz専用AOFSには、ダブルパス構成を考慮した製品があります。
2回の回折によって周波数シフト量を加算できますが、偏光や戻り光を含めた光路設計が必要です。
Q9AOFSでレーザー光の強度も制御できますか?
RFパワーを変えることで、1次回折光の光量を調整できます。
ただし、専用AOFSは安定した光周波数シフトと低RFパワー動作を重視した設計です。
高速なON/OFFや広帯域な強度変調が主目的の場合は、その条件に適したAO製品を選定します。
AO製品全体の違いは、上位のAO製品カテゴリーページで案内します。
Q10標準品にない周波数シフト量にも対応できますか?
G&H社は、使用波長、周波数シフト量、アパーチャ、偏光、RFドライバーなどに応じたカスタム設計に対応しています。
G&H社は最大600 MHzのカスタム周波数シフトを案内しています。
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