CMOSビームプロファイラーは
266 nmを直接撮像できるのか

266 nm長時間照射テストが示す「劣化の兆候」と「実務での注意点」

はじめに

深紫外(DUV)〜UV域のビームプロファイル測定では、「センサーが焼ける(劣化する)」という、地味ですが致命的な問題が常につきまといます。
そのため従来の DataRay社 CMOSカメラ型ビームプロファイラーは、短波長側のリスクを見込んで 355〜1350 nm を波長範囲としてきました。

一方で、355 nm未満の測定ニーズは現場で非常に多く、
れまで DataRay社 は蛍光結晶などでUVを可視光へ変換する UV波長変換デバイスも提供してきました。
ただし、変換デバイスは便利な反面、

  • 追加光学部品が増える(選定と調整が増える)
  • 配置・角度・歪みの影響を受けやすい(再現性が落ちる)
  • 「変換後の像」を見ているため、厳密には“その波長そのまま”の評価ではない

といった理由から、変換なしでUVを直接撮像できることが強く望まれてきました。

そこで近年、大学機関での検証を通じて「CMOSはCCDと構造が違うため、CCDで問題になるUV劣化が同じ形では起きないのでは」という仮説が立て、
DataRay社のCMOSカメラを用いた 266 nm照射耐性テストが実施されました。本稿ではその方法と結果を、図1〜3も踏まえて整理します。


実験条件

CMOSイメージセンサー表面へ、パルスUVビームを繰り返し照射し、センサー応答の変化を追跡しました。

  • 波長:266 nm
  • ビーム径:約 0.5 mm
  • 繰り返し周波数:10 kHz
  • パルス幅:60 fs
  • ビーム形状:ほぼガウシアン
  • 平均ピークパワー密度:約 0.5 µW/cm2
  • 照射時間:35時間40分
  • 総パルス数:1.3 × 109 パルス
  • テスト中、複数のタイミングで 正規化したセンサー信号を記録
  • UVは「同じ波長」でも、パワー密度と集光条件でセンサーへの負荷が別物になります。ここが“UVが優しいか辛辣か”を決めるスイッチです。

結果

(1)センサー応答は“わずかに低下傾向”だが、誤差範囲内

図1は、入射パルス数(×109)に対する正規化信号(ADC)の散布図です。
全体としてわずかな減衰傾向は見えますが、データ点はばらつきの中に収まっており、報告では 測定誤差の範囲内とされています。
つまり、「劣化が進行している」と断定できるほどの一貫した低下は確認されていません。

図1 図1:センサー上のパルス入射数の関数としてのセンサーの基準化されたシグナル応答わずかな減少傾向がみられるものの、データポイントは誤差の範囲内にあり、最少または存在しないセンサー減衰を示しています。

(2)ビームプロファイル画像は、テスト前後で大きな変化なし

図2(a)は、UVテスト開始時、図2(b)はテスト終了時のセンサー応答画像です。
両者を比較しても、ビーム形状・分布に大きな差は見られないとされています。
実務的には、「測定結果が途中から歪む/崩れる」といった兆候は、この条件では起きにくいことを示唆します。

左:図2(a): UVテスト最初のセンサー応答の画像 右:図2(b): UVレーザーテスト終了時のセンサー応答の画像
図2 (a) と比較した時、大きな差は見られません。

(3)フラット照明では“不均一性”が見えるが、致命的損傷は確認されず

図3は、センサーー全体を一定照度で均一に照射した(フラット照明)画像です。
もし、シリコンピクセルの損傷が進んでいれば、
入射ビームが当たっていた領域(中央付近)に明確なムラが出るはずですが、
図3ではそのような 決定的な劣化パターンは見られない、というのが報告の結論です。

図3:UVテスト終了後の一定照度でのセンサー画像シリコンピクセルが損傷していれば、画像中央部に非均一部分がみえるはずです;
しかし、劣化は見られず、テストではUV光はCMOSセンサーに対して大きな損傷は与えなかったということを示しています。

結論:266 nmを含むUV域で、CMOSが直接撮像できる可能性が示された

以上のテストから、DataRay社では 266 nmのUV照射条件下でも、CMOSセンサーに顕著な劣化は確認されなかったと結論づけています。
そのため、最近のテスト結果に基づく推奨として、DataRayは 266〜1350 nm のビームに対して WinCamD-LCM を推奨しています。


UVユーザー向け:現場での“安全運用”の要点

テストが好結果でも、UVは相変わらず気分屋です。運用では次を押さえるのが安全です。

  • 集光しすぎない:スポットを小さくするとパワー密度が急上昇し、条件が別物になります
  • 飽和させない:飽和は「見た目がダメ」だけでなく、センサー負荷のサインにもなり得ます
  • フラット照明で定期チェック:図2で問題がなくても、図3のように健康診断で差が出ることがある
  • 照射“総量”を管理:時間×繰り返しで蓄積する影響があり得るため、運用ログが効きます

DataRay社 CMOSビームプロファイラー一覧

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