光ディレイライン(ODL)は、入力用と出力用のファイバーコリメータで構成されます。
光ファイバーから空間に出射した光を再度光ファイバーに入射するデバイスです。
この距離を精密に可変制御することによって、遅延時間を正確に調整できます。
自由空間内の光路長は、入力・出力光学系の間隔を制御する方法、
あるいは可動反射鏡で光を反射させる方法によって、高精度に調整できます。
光が空間を伝搬する距離を可変制御することで、デバイスを通過する遅延時間を正確にコントロールします。
ODLは、手動式と電動式の2タイプ。
手動式はリードネジ、またはマイクロメーターで間隔を調整。
電動式はエンコーダ付きサーボモーターを採用し、サブミクロン分解能(<0.003 ps)を実現します。
RS-232インターフェース経由でPC制御、あるいはシンプルなTTL入力信号での手動操作が可能。
遅延量はピコ秒単位でキャリブレーション済みです。ホーム位置・エンド位置のセンサーも備え、誤操作による機器損傷を防止します。
ミニチュアタイプの遅延ラインもラインアップ。遅延範囲は最大13 ps。一般的なパッチコード接続とほぼ同等サイズながら、容易な調整と確実なロックを実現します。
特長
- 低挿入損失を実現
- サブピコ秒分解能
- 広帯域動作
- 【新仕様】遅延範囲1,200 ピコ秒超
- 偏光非依存設計
- SMファイバー版とPMファイバー版をラインアップ
- 電気制御タイプもご用意
- 超小型タイプ(ODL-700)あり
- 400〜2000 nmの波長帯に対応
仕様
型番 | ODL-100 | ODL-200 | ODL-300 | ODL-600 *4 | ODL-650 *4 | ODL-700 |
---|---|---|---|---|---|---|
駆動方式 | 手動リードネジ | 手動マイクロメーター | サーボモーター | 手動リードネジ, ミラー |
サーボモーター, ミラー |
手動調整ネジ |
移動距離 (mm) | 100 | 25 | 100 | 25x2=50, 50x2=100 |
25x2=50, 50x2=100 |
4 |
分解能 (µm) *1 | 318/ 回転 | 10/ 目盛 | 1.4/ パルス | 635/ 回転 | 0.8/ パルス | 210/ 回転 |
遅延時間範囲 (psec) | 330 | 83 | 330 | 167, 330 | 167, 330 | 13 |
遅延分解能 (psec) *1 |
1 psec / 回転 |
0.033 psec / 目盛 |
2.4 fsec / パルス |
2 psec/ 回転 | 1.4 fsec/ パルス, 1 fsec/ パルス |
0.67 psec / 回転 |
挿入損失(dB) *2*3 | <1.5 | <1.0 | <1.5 | <1.0, <1.1 |
<1.0, <1.1 |
<1.5 |
挿入損失変動 (駆動範囲内) (代表値) (dB) *3 |
0.5 | 0.1 | 0.5 | 0.15 | 0.15 | 0.5 |
大きさ [LxWxH] (mm) |
230x30x60 | 145x60x55 | 242x30x60 | 102x51x25, 132.5x50.8x30.2 |
105x51x25, 132.5x50.8x30.2 |
87x10.2 (直径) |
速度 (mm/sec) | N/A | N/A | 2.9 | N/A | 1, 2 |
N/A |
電源電圧 | N/A | N/A | 6 ~ 8V | N/A | 6 ~ 8V | N/A |
電源電流 | N/A | N/A | 400mA | N/A | 180mA | N/A |
動作温度 (℃) | - | - | - | - | -10°C to +60°C | - |
損失温度依存性 (全スキャン範囲) |
- | - | - | - | <1dB (10 ~ 40℃) <2dB (-10 ~ +60℃) |
- |
動作時間 | - | - | - | - | 連続使用5000時間以上 | - |
型番 | ODL-100 ODL-200 ODL-300 ODL-600 *4 ODL-650 *4 | ODL-700 |
---|---|---|
反射減衰量 (dB) | -35 (マルチモードファイバー)、 -40, -50, -60 (シングルモードファイバー) |
-50 |
-
*1ネジピッチ、モーター / エンコーダー分解能からの計算値。ODL-300、ODL-650のMC/RS232 タイプは分解能が 2倍になります。
-
*2全スキャン範囲
-
*31550nm シングルモードファイバー、偏波保持ファイバー、室温
-
*4オプションで330psecも可能
用途
- 高速ネットワークでのPMD補償
- 干渉計
- コヒーレント光通信
- 光スペクトラムアナライザー
応用例:ディレイラインによる偏波モード分散(PMD)補償
偏波モード分散(PMD)は、10 Gb/s や 40 Gb/s 以上の高速通信ネットワークを構築する際に避けて通れない課題です。
単一モードファイバーを伝搬する入力信号は、PMD によって必ず何らかの歪みを受けます。
信号は実質的に、互いに直交する二つの偏光成分へ分離され、一方の偏光が他方より先行してしまいます。
PMD を補償するためには、遅延ラインが欠かせません。
下図は、その遅延ラインを用いた補償方法の概要です。
PMD Compensation System Using a Variable Delay Line
-
①【分離】
SMファイバーからの光を偏光ビームスプリッター(PBS)で2つに分岐。 -
②【偏光変換】
スプリッターの前に置いた偏光コントローラーにより、任意の偏光成分を S偏光と P偏光へ変換。 -
③【遅延付与】
速度の速い S偏光をディレイラインに通し、遅い P偏光はそのままコンバイナーへ導入。 -
④【合波・受信】
2つの信号を合波後、受信器へ送信。 -
⑤【動的制御】
受信側の制御システムが信号品質を常時監視し、偏光と遅延量をリアルタイムで最適化。
このようにして2つの信号を再同期させることで、システム内の PMD を即時に補正できます。
注文方法
型番の一例
ODL-100-11-1550-9/125-S-40-3S3S-3-1
- 波長:1550nm
- ファイバー:9/125シングルモード
- 反射:40dB
- コネクター:FC/SPC、FC/SPC
- ジャケット:3mm PVCケーブル
- ファイバー長さ:1m
FAQ
Q1移動距離(mm)を遅延(ps)に換算する方法は?
遅延時間は、空気中の光速で距離を割って計算します。1 mm は 3.33 ps の遅延に相当。
なお ODL-600/ODL-650 では光が往復するため、遅延量は光学部の移動距離の 2 倍 になります。
Q2最小遅延は 0 ps ですか?
いいえ。光学部間の最小距離と接続ファイバーの長さにより、必ず最小遅延が発生します。
- 例:1 m ファイバー → 約 4.9 ns の遅延
-
光学部の最小間隔による遅延:30 ps~150 ps(モデル依存)
表に記載の遅延範囲は 『相対遅延』。
Q3目盛りは校正されていますか?
- ODL-200:マイクロメーター付きで移動量(mm)を直接読取。
- ODL-300(コントローラー付)/ODL-650:遅延を ps 表示。
-
その他モデル:校正機能なし。
いずれも 『相対値表示』 であり、絶対値ではありません(前問参照)。
Q4インライン型とリフレクター型の長所・短所は?
- インライン型:移動範囲が大きく、より長い遅延を生成。
-
リフレクター型:ファイバーが動かないため信頼性が高く、商用用途に最適。
研究室用途にはインライン型、商用システムにはリフレクター型が好適。
Q5ODL-300/ODL-650 の操作に専用ソフトは必要ですか?
Windows™ HyperTerminal™ などのターミナルソフトから テキストコマンド で操作可能。 ActiveX™ コントロール、LabVIEW™ ドライバー、Windows 用 GUI も付属。
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