AOD(Acousto-Optic Deflector : 音響光学偏向器)は、RF周波数を変化させることで、レーザービームの出射角度を高速に制御する音響光学デバイスです。

モーターや回転ミラーなどの可動部を使用せず、数マイクロ秒単位でビーム位置を切り替えられるため、レーザー加工、半導体製造、レーザー走査顕微鏡、バイオイメージング、LiDAR、量子コンピューティングなどに使用されます。

G&H社のAODは、紫外から中赤外まで幅広い波長に対応し、数百から数千のスポットを高速に走査できます。 1次元・2次元走査のほか、波長、スキャン角度、ビーム径、レーザー出力に合わせたカスタム設計にも対応します。 G&H社製品では、AODFというモデル名称が使用されています。(G&H)

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アプリケーションノート

AODとは

AODは、音響光学結晶に取り付けられたトランスデューサへRF信号を入力し、結晶内部に音響波を発生させるデバイスです。

音響波によって結晶内部の屈折率が周期的に変化し、レーザー光に対する回折格子として働きます。 AODへ入力するRF周波数を変えると、音響波の周期が変化し、1次回折光の出射角度が変わります。

RF周波数を連続的に掃引することでレーザービームをライン状に走査できるほか、周波数を高速に切り替えることで、複数の位置へランダムにビームを移動させることもできます。

ビームの偏向角度はRF周波数に応じて変化しますが、実際に得られるスキャン範囲は、RF中心周波数の高さだけでなく、使用波長、RF帯域幅、音響光学材料の音響速度によって決まります。


G&H社製AODの特長

可動部のない高速ビーム走査

AODは、機械的にミラーを動かすのではなく、RF周波数によってレーザービームの方向を制御します。

可動部がないため、機械的な加速・減速や反転動作を必要とせず、数マイクロ秒単位でビーム位置を切り替えられます。 高速性だけでなく、繰り返し精度や信頼性が求められる組み込み用途にも適しています。

数百から数千スポットの高分解能走査

G&H社のAODは、数度程度のスキャン範囲内に、数百から数千のスポットを分解できます。

分解可能スポット数は、主にRF帯域幅と、音響波がレーザービームを横切るアクセス時間の積によって決まります。

266 nmから10.6 µmまで対応

G&H社は、266 nmから10.6 µmまでのAODに対応しています。

使用波長や必要な性能に応じて、TeO2、結晶石英、ゲルマニウム、サファイアなどの音響光学材料を採用します。 標準製品では266~1500 nmの波長に対応し、中赤外や特殊波長についてもカスタム設計が可能です。

約5 mradから60 mrad超のスキャン角度

一般的なスキャン角度は約5 mradから60 mrad超です。

実際のスキャン角度は、使用波長、RF帯域幅、音響光学材料の音速などによって異なります。

スキャン範囲全体で均一な回折効率

AODでは、RF周波数を変化させても回折効率が大きく変動しないことが重要です。

G&H社は、1次元・2次元走査や固定角度への偏向において、スキャン範囲全体で均一な回折効率を得られる設計を特長としています。 加工位置や画像位置によるレーザー出力のばらつきを抑えたい用途に適しています。

最大15 mmのアクティブアパーチャ

小径ビーム向けの高速タイプから、最大15 mmのアクティブアパーチャを備えた大口径タイプまで選択できます。

ビーム径、アクセス時間、分解可能スポット数、レーザー出力の条件に応じて製品を選定します。

1次元・2次元走査に対応

AODを1台使用すると、1方向のライン走査が可能です。

偏向方向が直交する2台のAODを直列に配置することで、X-Y方向の2次元走査を構成できます。 G&H社は、2次元UVビーム走査向けに、位相同期した2出力を備えるAODF Dual Driverも提供しています。

カスタム設計・OEM対応

標準製品に加え、短波長、広いスキャン角度、大口径、マルチチャネルなど、用途に応じたカスタム設計に対応します。

AOD本体だけでなく、RFドライバーとの適合や量産性を含めたOEM開発が可能です。


製品一覧・データシート

AODは、まず使用波長と必要なスキャン角度から候補を絞り込みます。
そのうえで、分解可能スポット数、アクセス時間、アクティブアパーチャ、RF周波数範囲、回折効率などを確認します。

アクセス時間は、製品単体で一意に決まる固定値ではありません。
AOD内部における実際のビーム径と、製品に使用されている音響光学材料の音響速度から算出します。

AODには、対応する周波数範囲を出力できるRFドライバーが必要です。AOD本体とRFドライバーは、原則として組み合わせて選定してください。

  • アクセス時間は、概ね次の関係で決まります。

    アクセス時間の目安 = AOD内部でのビーム径 ÷ 音響速度

    ここでいうビーム径は、レーザー出射口におけるビーム径ではなく、音響波の進行方向に沿ったAOD内部でのビーム径です。

    たとえばAODF 4170の現行仕様には、音響速度5.74 mm/µs、RF帯域幅60 MHz、分解可能スポット数49、
    アクティブアパーチャ7 mmが掲載されています。ただし、アクセス時間そのものは固定値として掲載されていません。

AODの選び方

AODの選定では、使用波長やスキャン角度だけでなく、分解可能スポット数、ビーム径、RF帯域幅を併せて検討します。

特に、ビーム径を小さくするとアクセス時間を短縮できる一方、分解可能スポット数が減少しやすいというトレードオフがあります。
必要な走査速度と位置分解能のバランスを確認することが重要です。

AODの主な機能・用途

高速ビーム走査・位置決め

RF周波数を変化させ、レーザービームを高速に走査または任意の位置へ移動できます。 レーザー加工、半導体製造、リソグラフィ、光学検査などに使用されます。

顕微鏡・バイオイメージング

励起レーザーを高速に走査し、試料上の任意の位置へ照射できます。 レーザー走査顕微鏡、蛍光イメージング、光刺激などに適しています。

測距・ビームステアリング

送信レーザーの方向を高速に切り替え、複数方向の情報を取得できます。 LiDAR、レーザー測距、ターゲティング、トラッキングなどに使用されます。

原子・量子光学

RF周波数を高速に切り替え、複数の原子や量子ビットへレーザー光を選択的に照射できます。 中性原子量子コンピューティング、原子トラップ、量子ビットの個別アドレッシングなどに利用されます。


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