レーザービームの径を測定したい。そこで、測定したいビーム径がセンサーの範囲に収まる製品を選ぶ。
一見すると正しい選び方に思えますが、ビームプロファイラーは、ビーム径だけで選ぶと期待した測定ができないことがあります。
同じ1 mmのビームでも、波長、レーザー出力、CW/パルス、必要な空間分解能、2次元画像の要否によって、適した測定方式や製品は異なります。
また、確認すべきなのはレーザーの出口径ではなく、実際にビームプロファイラーを設置する位置でのビーム径です。
DataRayでは、ビームの2次元形状を確認できるカメラ方式、微小スポットの測定に適したスキャニングスリット方式、
M2や焦点位置をリアルタイムに評価するシステムなど、目的に応じた製品をラインアップしています。
この記事では、ビーム径だけでは決められない理由を整理しながら、
測定目的、波長、ビーム径、発振方式から、適切なDataRayビームプロファイラーを選ぶ考え方を解説します。
1. まずは「何を測定したいか」を整理する
ビームプロファイラーを選定するときは、最初から製品型番を比較する必要はありません。
まずは、何を確認したいのかを整理します。
- ビーム径を測定したい
- ビームの形状や強度分布を画像で確認したい
- 真円度や楕円率を評価したい
- ビームの中心位置やふらつきを記録したい
- 数µmクラスの集光スポットを測定したい
- 焦点位置や発散角を測定したい
- M2を評価したい
- ラインレーザーの幅や直線性を確認したい
- 高出力レーザーの集光状態を確認したい
ビーム径と2次元の強度分布を確認したい場合と、数 µmの集光スポットやM2を測定したい場合では、適した測定方式が異なります。
つまり、最初に決めるべきなのは製品名ではなく、測定によって何を知りたいかです。
カメラ方式とスキャニングスリット方式の違い
DataRayのビームプロファイラーは、大きく分けて次の2方式があります。
カメラ方式
カメラ方式は、センサー上に入射したレーザービームを、画素ごとの強度情報を持つ2次元画像として取得する方式です。
ビーム形状、強度分布、ビーム径、中心位置などを、疑似カラー画像や断面プロファイルで直感的に確認できます。 DataRayのカメラ方式には、WinCamD、BladeCam、TaperCamDシリーズがあります。
カメラ方式が向いている用途
- ビームの2次元形状を見たい
- ビーム径と中心位置を測定したい
- ビームの歪みや非対称性を確認したい
- ホットスポットやサイドローブを見つけたい
- パルスごとのビーム形状を確認したい
-
ビームのふらつきを連続的に記録したい
ビームの状態を「画像として見たい」場合は、まずカメラ方式を検討すると分かりやすいでしょう。
スキャニングスリット方式
スキャニングスリット方式は、細いスリットをレーザービーム上で走査し、X方向とY方向の強度分布を測定する方式です。
カメラ方式のような2次元画像は取得しませんが、画素サイズに制限されにくく、非常に小さなビームを高い空間分解能で測定できます。
DataRayのBeam'R2は、標準スリットとナイフエッジスリットを備え、最小2 µmのビーム径測定に対応しています。
スキャニングスリット方式が向いている用途
- 数 µm~数十 µmの微小ビームを測定したい
-
カメラの画素サイズでは分解能が不足する
- 2次元画像より、正確なビーム径測定を重視する
- CWまたは準CWレーザーを測定したい
- 焦点位置、発散角、M2まで評価したい
カメラ方式とスキャニングスリット方式の簡易比較
| 比較項目 | カメラ方式 | スキャニングスリット方式 |
|---|---|---|
| ビームの2次元画像 | 取得できる | 取得しない |
| 微小ビームの測定 | 画素サイズや光学系に依存 | 得意 |
| パルスレーザー | 対応モデルあり | 基本的にCW/準CW向け |
| ビーム形状の確認 | 得意 | X ・ Y方向のプロファイル |
| 空間分解能 | 画素サイズに依存 | 高分解能 |
| M2測定 | 移動ステージとの組み合わせで対応 | Beam'R2、BeamMap2で対応 |
| 測定結果の分かりやすさ | 画像で直感的に確認できる | 数値評価に適する |
2. ビーム径だけでは決まらない、選定の5つのポイント
① レーザーの波長
ビームプロファイラーは、使用するセンサーや検出器によって対応波長が異なります。
可視光や近赤外レーザーではCMOSセンサーを使用したカメラ方式が候補になりますが、 1550 nm帯、2 µm帯、MWIR、FIR、CO2レーザーなどでは、それぞれの波長に適したセンサーや検出器が必要です。
DataRayのカメラ方式は、製品やコンバーターの組み合わせにより、190 nmから16 µmまでの波長域をカバーしています。 また、スキャニングスリット方式のBeam'R2およびBeamMapシリーズは、検出器の選択により190~2500 nmに対応します。
ただし、波長が対応範囲に入っているだけでは、適切な製品とは限りません。
同じ1550 nmのレーザーでも、2次元画像を取得したいのか、微小ビームを高分解能で測定したいのかによって、選ぶ製品は変わります。
② 測定位置でのビーム径
ビーム径は重要な選定条件ですが、単に「センサー内に収まるか」だけを確認すればよいわけではありません。
カメラ方式では、次の2つを同時に満たす必要があります。
- ビーム全体がセンサーの有効面内に収まること
- 十分な数の画素でビームを捉えられること
ビームが小さすぎると、ビームを構成する画素数が不足し、形状やビーム径を正確に評価しにくくなります。 反対に、大きすぎるとビーム全体がセンサー内に収まりません。
DataRayのBladeCam2-XHRは3.2 µm画素を採用し、最小32 µmのビーム測定に対応します。 さらに小さなビームでは、最小2 µmに対応するスキャニングスリット方式のBeam'R2が候補になります。
大きなビームには、有効面積25×25 mmのTaperCamD-LCMがあります。 さらに大口径のビームには、最大200×200 mmの測定範囲を持つLarge Beam Profiling Systemが用意されています。
なお、選定時に必要なのは、レーザーのカタログに記載された出口径ではなく、実際にプロファイラーを設置する位置でのビーム径です。
伝搬距離、レンズ、ミラー、ビームエキスパンダーなどによって、測定位置でのビーム径は変化します。
③ CWレーザーか、パルスレーザーか
レーザーの発振方式も、測定方式を決める重要な条件です。
カメラ方式でパルスレーザーを測定する場合は、次の仕様を確認します。
- グローバルシャッターの有無
- 外部トリガーへの対応
- 露光時間
- フレームレート
- レーザーの繰返し周波数
- 単発パルスか連続パルスか
WinCamD-LCMはグローバルシャッターを搭載し、CWレーザーとパルスレーザーの両方に対応します。 WinCamD-QDもグローバルシャッターを採用しており、SWIR ・ eSWIR領域のパルスビームプロファイリングに対応しています。
一方、スキャニングスリット方式は、スリットを機械的に走査しながら強度分布を取得するため、基本的にはCWまたは準CWレーザーに適しています。
パルスレーザーでは、「パルスレーザー対応」と記載されているだけで判断せず、繰返し周波数やトリガー条件まで確認することが重要です。
④ 2次元画像が必要か、数値測定を重視するか
「ビームを画像として確認したいか」は、方式を選ぶ大きな分岐です。
次のような状態を視覚的に確認したい場合は、カメラ方式が適しています。
- ビームの歪み
- 非対称な強度分布
- ホットスポット
- サイドローブ
- 複数のピーク
- 光学素子による欠けや影
- 時間による形状変化
カメラ方式では、ビーム全体を画素ごとの強度情報として取得するため、単純なX ・ Y方向の断面だけでは分かりにくい異常も確認できます。
一方、必要なのが微小なビーム径やX ・ Y方向のプロファイルであり、ビーム全体の画像が不要であれば、スキャニングスリット方式が有力です。
たとえば、レーザー発振状態や光学系の調整にはカメラ方式、集光レンズ後の微小スポット測定にはスキャニングスリット方式が適する場合があります。
⑤ M2、焦点位置、発散角まで測定するか
ビーム径や形状だけでなく、レーザーの集光性能や伝搬特性を評価する場合は、M2、焦点位置、発散角、ポインティングなどの測定が必要です。
M2は、実際のレーザービームが理想的なガウシアンビームからどの程度ずれているかを示す指標です。 M2が1に近いほど理想的なビームで、一般に小さなスポットへ集光しやすくなります。
M2を求めるには、ビームの伝搬方向に沿って複数のZ位置でビーム径を測定する必要があります。 DataRayでは、カメラ方式やBeam'R2と自動移動ステージを組み合わせたM2測定に対応しています。
BeamMap2は、複数のZ位置に配置されたXYスリットで4つのビームプロファイルを同時に測定し、M2、焦点位置、発散角、ポインティングをリアルタイムに評価します。
次のような用途では、BeamMap2が有力な候補になります。
- レンズの焦点位置を調整したい
- 光学ユニットごとの焦点位置を揃えたい
- ビームの発散角をリアルタイムで確認したい
- 光軸の傾きやポインティングを測定したい
- 製造工程でM2を繰り返し評価したい
3. 測定目的から選ぶ、DataRayの主な製品
一般的なビーム径・形状測定
主な候補 : WinCamD-LCM、BladeCam2シリーズ
可視光から近赤外域のビームについて、2次元形状、ビーム径、中心位置、強度分布などを測定する一般的な用途に適しています。
WinCamD-LCMはDataRayの代表的なカメラ方式プロファイラーで、CWとパルスの両方に対応します。 BladeCam2シリーズは薄型 ・ コンパクトで、光学系の限られたスペースへの設置や装置組込みにも適しています。
数 µmクラスの微小ビーム測定
主な候補 : Beam'R2
集光レンズ後の微小スポットなど、カメラの画素サイズでは測定が難しい小さなビームに適しています。
Beam'R2は、標準スリットとナイフエッジスリットを備え、最小2 µmのビーム径測定に対応します。 単一のZ位置でX ・ Y方向のビームプロファイルを取得したい場合に適しています。
焦点位置 ・ 発散角 ・ M2のリアルタイム測定
主な候補 : BeamMap2
複数のZ位置でビームを同時に測定し、焦点位置、M2、発散角、ポインティングをリアルタイムに評価します。
レンズ評価、光学系のアライメント、レーザー製造工程での調整や検査などに適しています。
1550 nm ・ 2 µm帯のビームを画像化
主な候補 : WinCamD-QD
WinCamD-QDシリーズは、コロイド量子ドットセンサーを採用したカメラ方式のビームプロファイラーです。
製品構成により最大350~2000 nmの波長域に対応し、1550 nm帯や2 µm帯のビームについて、2次元の強度分布を取得できます。 グローバルシャッターを備え、パルスビームの測定にも対応しています。
MWIR ・ FIR ・ CO2レーザー
主な候補 : WinCamD-IR-BB
WinCamD-IR-BBは、2~16 µmに対応したマイクロボロメーター方式のビームプロファイラーです。
MWIR、FIR、CO2レーザーなどについて、ビーム形状や強度分布を2次元画像として確認できます。
大口径ビーム
主な候補 : TaperCamD-LCM、Large Beam Profiling System
TaperCamD-LCMは25×25 mmの有効面積を持ち、一般的なカメラでは収まりにくい大きなビームに対応します。
さらに大きなビームや、広がり角の大きなビームには、透過スクリーンと再結像光学系を使用し、最大200×200 mmの測定範囲を持つLarge Beam Profiling Systemが候補になります。
ラインレーザー
主な候補 : Line Laser Profiling System
Line Laser Profiling Systemは、ラインレーザーの長さ、幅、中心位置、傾き、直線性などを評価する専用システムです。
最大200 mmのライン長と、最小55 µmのライン幅に対応しています。
高出力レーザーの集光スポット
主な候補 : Industrial Laser Monitoring System
高出力レーザーの焦点付近では、レーザーをそのままカメラセンサーへ入射すると、センサーを損傷するおそれがあります。
Industrial Laser Monitoring Systemは、偏光を維持するビームサンプラー、再結像 ・ 拡大光学系、DataRayビームプロファイラーを組み合わせた測定システムです。
高出力レーザーを減衰しながら、数 µmクラスの集光スポットを2次元で測定できます。 対応できるレーザー出力やビーム径は、システム構成によって異なります。
4. レーザー出力だけでも判断できない
ビームプロファイラーへの入射可否は、レーザーの総出力だけでは判断できません。
たとえば、同じ1 Wのレーザーでも、ビーム径が10 mmの場合と10 µmの場合では、センサーに入射するパワー密度が大きく異なります。
選定時には、プロファイラーを設置する位置での次の条件を確認します。
- ビーム径
- 平均出力
- パワー密度
- パルスエネルギー
- パルス幅
- 繰返し周波数
- ピークパワー
必要に応じて、NDフィルター、ビームサンプラー、アッテネーター、再結像光学系などを使用します。 DataRayでは、減衰用フィルター、ビームサンプラー、移動ステージ、UV ・ IRコンバーターなどのアクセサリーも用意されています。
特に高出力レーザーやパルスレーザーでは、「平均出力がセンサーの許容範囲内だから大丈夫」とは限りません。 ピークパワーやパワー密度を含めて確認する必要があります。
5. 選定時に確認したい項目
ビームプロファイラーの選定をご相談いただく際は、分かる範囲で次の情報をご用意ください。
| 確認項目 | 記入例 |
|---|---|
| レーザー波長 | 355 nm、532 nm、1064 nm、1550 nm、10.6 µm |
| 発振方式 | CW、パルス |
| 測定位置でのビーム径 | 約1 mm、約20 µm、不明 |
| 平均出力 | 100 mW、10 W |
| パルスエネルギー | 1 mJ |
| パルス幅 | 10 ns |
| 確認項目 | 記入例 |
|---|---|
| 繰返し周波数 | 10 kHz |
| 測定したい項目 | ビーム径、形状、M2、焦点位置 |
| 2次元画像の要否 | 必要、不要、不明 |
| 使用目的 | 研究開発、装置調整、製造工程、保守 |
| 設置条件 | 卓上測定、装置組込み、狭い光学系内 |
すべての条件が分からなくても問題ありません。
レーザーの仕様書、現在の光学系の構成、プロファイラーを設置したい位置などが分かれば、必要な減衰光学系や測定方法を含めて検討できます。
6. まとめ:ビーム径は「入口」であって、答えではない
DataRayのビームプロファイラーを選定する際は、次の順番で条件を整理すると候補を絞りやすくなります。
-
①何を測定したいか
-
②2次元画像が必要か
-
③レーザーの波長
-
④測定位置でのビーム径
-
⑤CWかパルスか
-
⑥M2や焦点位置まで測定するか
-
⑦レーザーを安全に減衰できるか
一般的なビーム形状の確認にはカメラ方式、微小ビームの高分解能測定にはスキャニングスリット方式が基本的な選択肢です。
ただし、同じ波長やビーム径でも、レーザーの発振条件、測定目的、必要な分解能によって最適な構成は異なります。
ビーム径は、製品を絞り込むうえで重要な情報です。 しかし、ビーム径だけで製品を決めるのではなく、波長、発振方式、測定目的、2次元画像の要否をあわせて考えることが、失敗しない選定につながります。
測定条件がまだ固まっていない場合も、まずは「波長」「測定位置でのビーム径」「測定したい項目」の3点からご相談ください。

