レーザー干渉計、光学検査装置、LiDAR、分光計測、3D計測などでは、レーザー光の位置、スポット径、焦点、強度分布が測定精度に直接影響します。
レーザーは、対象物に接触することなく、距離、変位、振動、平坦度、表面粗さ、欠陥などを高精度に測定できます。 そのため、自動車、医療、航空宇宙をはじめとする幅広い分野で、計測、検査、工程管理に利用されています。
一方、測定に使用するレーザービームの状態が変化すると、検出感度の低下や測定値のばらつきにつながる可能性があります。 計測装置や検査装置の性能を安定して維持するためには、レーザー光のアライメント、焦点位置、ビーム径、強度分布などを定期的に確認することが重要です。
ビームプロファイラーを使用することで、レーザービームの状態を画像と数値で把握し、装置の立ち上げ、製造工程、出荷検査、定期点検に活用できます。
1. レーザー計測・検査の精度は、ビーム状態に左右されます
レーザーを利用した計測・検査では、光源から出射されたビームが、設計どおりの位置、径、形状で対象物に照射されていることが前提となります。
しかし、周囲温度の変化、振動、光学部品の汚れや劣化、機械的なずれなどによって、ビームの状態は時間とともに変化することがあります。
たとえば、次のような現象が測定結果に影響します。
ビーム位置や光軸のずれ
受光部や測定対象への入射位置が変わることで、測定値の再現性が低下する可能性があります。
スポット径の変化
照射範囲が変わり、空間分解能や検出感度に影響します。 スポットが大きすぎる場合は微細な欠陥を捉えにくくなり、小さすぎる場合は位置変動の影響を受けやすくなります。
焦点位置のずれ
検査対象と焦点面が一致していない場合、必要な分解能や光強度を得られないことがあります。
強度分布やビーム形状の変化
光学系の汚れ、損傷、ミスアライメントなどにより、ビームの形状や強度分布が変化すると、測定領域に均一な光を照射できなくなる可能性があります。
こうした変化を目視だけで判断することは困難です。
ビームプロファイラーを使用して定量的に測定することで、わずかな変化や異常も把握しやすくなります。
2. レーザーが活用される主な計測・検査用途
レーザーは、非接触で測定できることに加え、可視光では確認しにくい変位、表面状態、成分などを検出できることが特長です。
干渉計測
レーザー光の干渉を利用して、距離、変位、振動、平坦度、表面形状などを高精度に測定します。 光学部品の形状測定、精密ステージの位置測定、振動計測、半導体製造装置の位置制御などに利用されています。 干渉計測では、ビーム位置や光軸のずれが干渉縞や信号強度に影響するため、アライメントとビーム径の管理が重要です。
光学部品・表面の欠陥検査
レンズ、ミラー、ウエハ、医療用光学部品などの表面にある傷、欠け、異物、形状不良を検出します。 検査対象上のスポット径や焦点位置が適切でない場合、微細な欠陥を見逃したり、装置ごとに検出感度が変化したりする可能性があります。
距離計測・3D形状測定
レーザー光の反射や往復時間、三角測量などを利用して、対象物までの距離や立体形状を測定します。 部品寸法の検査、外観検査、位置決め、ロボットビジョンなどに活用されています。 ビームの発散角やスポット径が変化すると、測定距離や空間分解能に影響するため、光源の状態を把握しておくことが重要です。
LiDAR・レーザー測距
レーザーパルスを対象物へ照射し、反射光を検出することで距離や位置を測定します。 自動運転、地形測量、航空宇宙、設備監視など、広い範囲で利用されています。 LiDARでは、ビームの発散角、ポインティング、照射位置、強度分布が測定範囲や検出精度に影響します。
ガスセンシング・分光計測
特定波長のレーザー光が物質に吸収される性質を利用し、ガスの種類や濃度、材料の成分を測定します。 大気汚染の監視、配管からのガス漏れ検知、工場内のプロセス監視、研究開発などに利用されています。 測定光が検出器や測定セルに正しく入射しているかを確認するため、ビーム位置やビーム径の管理が必要です。
3. 波長帯によって異なるレーザー計測の用途
使用されるレーザーの波長帯は、検査対象や測定原理によって異なります。
| 波長帯 |
主な用途例 |
|---|---|
| UV |
干渉計測、微細構造の計測、各種精密計測 |
| 可視光 |
アライメント、ホログラフィ、光学干渉計、光学部品の欠陥測定 |
| 近赤外・赤外 |
距離計測、ガスセンシング、環境モニタリング、LiDAR、分光計測 |
ビームプロファイラーを選定する際には、用途だけでなく、使用波長に対応したセンサーや測定方式を選ぶ必要があります。
4. 計測・品質管理で確認すべきビームパラメーター
計測装置や検査装置の性能を維持するためには、単にレーザーが出射していることを確認するだけでは十分ではありません。
ビームプロファイラーを使用し、次のようなパラメーターを確認します。
ビーム位置・ポインティング
ビームの中心位置と、光軸に対する進行方向を確認します。 ビーム位置の変動やポインティングのずれは、受光部への入射条件や対象物への照射位置を変化させ、測定精度や再現性を低下させる原因となります。 時間ごとのビーム中心位置を記録することで、レーザーの安定性や装置の熱変動も評価できます。
ビーム径・スポットサイズ
ビーム径は、対象物にレーザーが照射される範囲を示す重要なパラメーターです。 焦点付近ではビーム径が最小となり、この部分はビームウエストまたはスポットサイズと呼ばれます。 スポットサイズが設計値から外れると、対象物へ照射される光の密度や測定範囲が変化します。微細な欠陥検査や高分解能の形状測定では、特に重要な評価項目です。
焦点位置・焦点面
焦点面は、集光されたレーザービームが最小のスポット径となる位置です。 多くの計測・検査装置では、焦点面を対象物の表面や測定面に合わせます。焦点位置がずれると、スポット径や強度が変化し、分解能や検出感度が低下する可能性があります。 共焦点計測のように、焦点位置を光軸方向へ移動させながら深さ情報を取得する方式では、焦点位置の把握が測定精度に直結します。

強度分布
ビームプロファイラーでは、ビーム内部の相対的な強度分布を二次元画像として確認できます。 たとえばガウシアンビームでは、中心部の強度が最も高く、外周に向かって徐々に低下します。 ビーム全体のパワーが同じでも、強度分布が変化すると、対象物に照射されるエネルギー密度や検出信号が変わる可能性があります。 CWレーザーでは、単位面積当たりのパワーを放射照度またはパワー密度として表します。パルスレーザーでは、単位面積当たりのエネルギーをフルエンスまたはエネルギー密度として評価します。

ビーム形状
レーザー計測では、用途に応じて異なるビーム形状が使用されます。 代表的なビーム形状には、次のようなものがあります。
- ガウシアンビーム
- フラットトップビーム
- ラインビーム
- ベッセルビーム
- リング状ビーム
干渉計測、アライメント、ガスセンシング、LiDARなどでは、ガウシアンに近いビームが広く使用されています。 一方、測定領域へ均一に光を照射する必要がある場合には、フラットトップビームが用いられることがあります。 ビームプロファイラーを使用することで、意図した形状が得られているか、ビームの一部に欠けや強度ムラがないかを確認できます。

ビーム伝搬・発散角・M2
レーザービームは、空間を伝搬するにつれてビーム径が変化します。 発散角は、ビームウエストから離れるにつれてビームがどの程度広がるかを示します。発散角が設計値から外れると、遠方でのスポット径や集光後のビーム径に影響します。 M2は、実際のレーザービームが理想的なガウシアンビームにどの程度近いかを示すビーム品質の指標です。 M2が1に近いビームは、小さなスポットへ集光しやすく、コリメートもしやすい傾向があります。M2が大きくなると、理想的なガウシアンビームから離れ、同じ光学系でも小さく集光しにくくなります。 光軸方向の複数位置でビーム径を測定することで、焦点位置、ビームウエスト、発散角、M2などを評価できます。
5. 開発から定期点検まで活用できるビームプロファイリング
ビームプロファイラーは、装置開発時だけでなく、製造、出荷、保守まで幅広い工程で利用できます。
装置の開発・立ち上げ
光学設計どおりのビーム径、焦点位置、光軸、ビーム形状が得られているかを確認します。 光学部品やレーザー光源を変更した際の比較評価にも利用できます。
組立・アライメント工程
レーザー光源、ミラー、レンズ、受光部などを組み込んだ後に、ビーム位置や光軸を確認します。 目視やパワーメーターだけでは判断しにくい、ビームの偏りや形状変化も確認できます。
出荷検査・品質管理
製品ごとのビーム径、中心位置、強度分布などを記録し、あらかじめ設定した品質基準に適合しているかを確認します。 測定結果を保存することで、装置間のばらつきや製造工程の変化も把握しやすくなります。
定期点検・予防保全
装置の使用期間に応じてビーム状態を定期的に測定し、初期状態や前回の測定結果と比較します。 ビーム位置や形状の変化を早期に検出することで、光学部品の汚れ、劣化、位置ずれなどによる測定性能の低下を防ぎやすくなります。
6. ビームプロファイラー選定時の確認項目
計測・品質管理用のビームプロファイラーは、測定するレーザーの条件に合わせて選定します。
| 確認項目 |
選定時のポイント |
|---|---|
| 波長 |
UV、可視、NIR、SWIR、MWIR、LWIRなど、使用波長に対応しているか |
| ビーム径 |
最小スポット径と最大ビーム径を測定できるか |
| レーザーパワー |
センサーへ直接入射できるか、減衰器が必要か |
| CW/パルス |
連続発振とパルス発振のどちらに対応するか |
| パルス条件 |
繰り返し周波数、パルス幅、ピークパワーに対応できるか |
| 測定位置 |
焦点付近、コリメート部、遠方界のどこを測定するか |
| 測定範囲 |
センサーの有効面積内にビーム全体が収まるか |
| 測定頻度 |
開発時の一時的な測定か、工程内での定期測定か |
| 必要な解析項目 |
ビーム径、中心位置、形状、発散角、M2など、必要な解析が可能か |
同じ用途でも、波長、パワー、ビーム径、発振方式によって適切な測定方式は異なります。
7. 計測・品質管理に対応するDataRayのビームプロファイラー
DataRayでは、UVから赤外までの幅広い波長帯や、微小ビームから大口径ビームまで、
さまざまな測定条件に対応するビームプロファイラーを提供しています。
WinCamD-LCM
UV、可視、近赤外領域のレーザービーム測定に対応するカメラ式ビームプロファイラーです。 グローバルシャッターを採用し、CWレーザーとパルスレーザーの両方に対応します。標準構成では355~1150 nmをカバーし、UV、1310 nm、1550 nmに対応するオプションも用意されています。 干渉計、アライメント、光学検査、LiDAR、各種計測装置など、幅広い用途に適しています。
WinCamD-IR-BB
2~16 µmの広い赤外波長帯に対応するカメラ式ビームプロファイラーです。 低パワーの赤外レーザーに対応する高い感度を備えており、中赤外・長波赤外レーザー、量子カスケードレーザー、赤外分光、ガスセンシングなどのビーム評価に適しています。
Beam’R2
最小2 µmの微小ビームを直接測定できる、スリットスキャン方式のビームプロファイラーです。 焦点付近の微小スポットや、カメラ式ビームプロファイラーでは画素サイズの影響を受けやすい小径ビームの測定に適しています。 レンズの集光性能、微細検査装置、顕微鏡光学系などの評価に利用できます。
Large Beam Profiling System
最大200×200 mmの広い領域で、大口径ビームや高発散ビームを測定するシステムです。 センサーへ直接収めることが難しい大径ビームや、距離によって急速に広がるビームの形状、径、中心位置などを評価できます。
8. 測定条件に合ったビームプロファイラーをご提案します
ビームプロファイラーは、使用波長だけでなく、ビーム径、パワー、CW/パルス、測定位置、必要な解析項目を考慮して選定する必要があります。
「使用しているレーザーを測定できるか分からない」「装置内の限られたスペースで測定したい」「焦点位置やM2まで評価したい」といった場合も、
測定条件に合わせて適切な構成をご提案します。
レーザーの波長、出力、ビーム径、発振方式、測定目的など、分かる範囲の情報を添えてお問合せください。

