光ファイバーは、光の「通り道」だけではない
光ファイバーというと、多くの場合は「光を伝えるための細い線」を思い浮かべます。
一方の端から光を入れると、ファイバーの中を伝わり、もう一方の端から出てくる。途中で多少の損失はあっても、基本的には光を目的地まで運ぶための部品です。
このようなファイバーは、パッシブファイバーと呼ばれます。
いわば、光の通り道です。
一方で、光ファイバーにはもうひとつ重要な種類があります。
それが、アクティブファイバーです。
アクティブファイバーとは何か
アクティブファイバーは、光をただ伝えるだけではありません。ファイバー内部で光を増幅し、入力された光よりも大きな出力を得ることができます。
このアクティブファイバーは、ファイバーレーザーやファイバー増幅器の中核となる部品です。現在のレーザー技術を支える、重要な要素のひとつといえます。
では、なぜファイバーで光を増幅できるのでしょうか。
光を増幅する仕組み
その仕組みの中心にあるのが、希土類イオンのドーピングです。
エルビウム、イッテルビウム、ツリウム、ホルミウム、ネオジムなどのイオンを、ファイバーのコア部分に微量に添加します。そこにポンプ光と呼ばれる別の光を入れると、添加されたイオンがエネルギーを吸収します。
この状態で、増幅したいシード光がファイバーを通ると、蓄えられたエネルギーがシード光と同じ性質のレーザー光として放出されます。
単に明るい光が追加されるのではなく、波長や位相のそろった光として増幅される点がポイントです。つまり、アクティブファイバーの中では、ポンプ光のエネルギーがシード光に受け渡され、レーザー光として成長していきます。
ファイバー増幅器が使われる理由
アクティブファイバーを使った増幅には、いくつかの大きな利点があります。
まず、ファイバー自体が増幅媒体になるため、装置を比較的コンパクトにしやすいこと。次に、光がファイバー内に閉じ込められて伝わるため、光軸の安定性を確保しやすいこと。そして、熱の扱いやシステム設計の面でも、バルク型のレーザー増幅器とは異なるメリットがあります。
そのため、アクティブファイバーは、材料加工、通信、センシング、医療、航空宇宙、防衛、慣性航法など、幅広い分野で利用されています。
用途は異なっても、共通する要求があります。
それは、小型で、効率が高く、安定して使えるレーザー光源が必要であるということです。
LiDARと衛星通信に求められるもの
たとえばLiDARでは、遠くの対象物を正確に検出するために、十分なレーザー出力が必要になります。一方で、車載用途では、装置を大きく重くすることはできません。発熱、消費電力、長期信頼性も重要です。
1550 nm帯のファイバー増幅器が注目される理由のひとつは、高出力化と小型化を両立しやすいことにあります。
衛星通信でも、同じような課題があります。衛星同士をレーザーで結ぶ光通信では、限られたスペースと電力の中で、安定した光出力を得る必要があります。さらに宇宙環境では、放射線による性能劣化も考慮しなければなりません。
実験室で性能が出るだけでなく、過酷な環境で長く動作することが求められます。
ファイバー選定は、単なるスペック比較ではない
ここで見えてくるのは、アクティブファイバーの選定が、単なるカタログスペックの比較では済まないということです。
出力や利得だけでなく、ノイズ特性、ASEの抑制、熱への耐性、放射線耐性、コーティング、融着接続性、パッシブファイバーとの組み合わせまで含めて考える必要があります。
ファイバー増幅器やファイバーレーザーでは、アクティブファイバー単体の性能だけでなく、前後の光学系や接続部を含めたシステム全体の整合性が、最終的な性能と信頼性を左右します。
システム全体で考えることの重要性
この点で、Coherentのようにアクティブファイバーとパッシブファイバーの両方を幅広く展開しているメーカーには、設計上の強みがあります。
単に利得ファイバーを提供するだけでなく、用途に応じたドーパント、ファイバー構造、コーティング、マッチングファイバーまで含めて選定できるため、増幅器やレーザーシステムを組み上げる際の不確定要素を減らしやすくなります。
特に、LiDARや衛星通信のように、小型・高効率・高信頼性が同時に求められる用途では、ファイバー選定の重要性はさらに高まります。
高出力を出せることだけでなく、長期間にわたり安定して動作すること。接続損失を抑えられること。環境変化に耐えられること。これらが、実用上の大きな差になります。
光を「育てる」部品としてのアクティブファイバー
アクティブファイバーは、光を「通す」部品ではなく、光を「育てる」部品です。
だからこそ、その選定には、材料、構造、製造品質、周辺ファイバーとの整合性まで含めた総合的な視点が欠かせません。
ファイバーレーザーやファイバー増幅器を考えるとき、どのファイバーを選ぶかは、単なる部品選びではありません。システム全体の性能、信頼性、将来の量産性を決める基礎設計の一部です。
その意味で、Coherentの光ファイバーは、アクティブファイバーを検討するうえで、自然に候補に入ってくる存在だといえます。
関連製品:Coherent NuEYDF-SMRシリーズ
CoherentのNuEYDF-SMRシリーズは、エルビウム・イッテルビウム共添加のアクティブシングルモードファイバーです。LiDAR、衛星通信、CATVなど、1550 nm帯の高効率なファイバー増幅が求められる用途を想定して設計されています。
高温環境に対応するHTAコーティング、宇宙用途を見据えた耐放射線性、不要な1 µm帯ASEの抑制など、実用環境で重要になる要素を備えている点が特長です。また、マッチングされたパッシブファイバーと組み合わせることで、増幅器全体の設計自由度と信頼性を高めやすくなります。
小型・高効率・高信頼性が求められるファイバー増幅器を検討する際に、NuEYDF-SMRシリーズは有力な選択肢となる製品です。


